前略 ワイドショーレポーター
今は連日、新型コロナウイルスのことばかりで芸能ネタや事件ネタがワイドショーを賑わすことはない。
でももしも、「9人の翻訳家」の中で起きたことが現実にあったとしたら、警察署や翻訳家たちの家などにレポーターは大挙して、連日テレビを賑わせるだろう。
「そーなんですよ、川崎さん」
新型コロナウイルスのおかげで、吉本チャンネルで久しぶりに見た「ザ・ぼんち」のネタを懐かしく思っている場合じゃない。この映画、ラストまで、尻上がりにハラハラドキドキが加速する。
個性的な登場人物たちが絡むミステリー
アメリカ映画っぽいタイトルだけど、フランスとベルギーの合作映画だということに、まずは驚かされる。
9人の翻訳家に加え、出版社の社長、スタッフ、警備員、、、常に登場している人物が多くて、誰と誰が関わっているのか、人物を深掘りしようとすると足元を掬われる。誰がなんだか分からなくなる。混乱して、途中、脱落しかかったほど。
しかし、ストーリーがエンディングに向かい、謎が一つ一つと明らかになるにつれ、おもしろさの虜になってしまうことに気付く。
暗いトーンで続く物語は、最後の最後まで予想を裏切られ続けた。
「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」あらすじ
ミステリー小説「デダリュス」完結編を世界で同時に発売するため、洋館の地下室に9か国の翻訳家が集められる。彼らは外部との接触を禁止され、毎日20ページだけ渡される原稿の翻訳作業に没頭していた。
ある夜、出版社の社長(ランベール・ウィルソン)のもとに、「デダリュス」の冒頭をインターネットに公開したというメールが届く。そこには、指定時間内に金を支払わなければ次の100ページ、要求を拒めば全てのページを流出させると書かれていた。
引用 https://movies.yahoo.co.jp/movie/370437/
著者と出版社と熱烈な読者
人気ミステリー小説を、9カ国の言語で翻訳して、同時発売して稼ぐというビジネスモデルは、現代においては終焉を迎えたと言える。
だからこの映画の中で起きている話しが現実にあることはないだろう。無料公開したら、売れなくなるなんてことはない。むしろ、面白ければ、売上が加速するはずだ。映画とは関係のない余談だが、そういう時代になった。
この小説で儲けようとしている出版社の社長は、金にしか関心がなく、文化を育むとか、読者を楽しませるとかいうカスタマーファーストの精神を失ってしまったことで、事件を起こすことになる。
熱烈な読者無くして、小説家の苦労は報われない。
終わりよければ全て良し
時を戻して、この映画は展開を予想しながら見ていると、訳が分からなくなるから注意が必要だ。よーく見ておかないと、人間関係が理解できなくなってしまう。わたしはその罠にハマってしまったわけだが、それでも、ラスト30分を超えたあたりからの畳み掛ける展開は引き込まれてしまった。
ネダバレになってしまうが、謎とされた著者が、熱烈なファンだったなんてこと、想像させないくらいに秀逸なストーリーだ。
終わり方も、センスが良くて、おしゃれなので、謎解きが好きな人におすすめだ。
「ちょっと待ってください、山本さん!」
なんてこと言ってる暇がないくらいに、引き込まれてください。