お待たせいたしました、
お待たせしすぎたかもしれません。
あの男が舞台に現れた。
特徴ある甲高い声で有名なAV監督、村西とおるさんを追ったドキュメンタリー映画が公開されている。 山田孝之さんの主演でリリースされた「全裸監督」の影響か、館内はマン席、SOLDOUT。
『死にたいと思った時は、下を見ろ。
俺がいる。』
前科7犯、借金50億円のどうしようもないはずの男が言い放つ言葉が妙に刺さるのは、何故だろうか。この映画にその一端を探してみる。
「村西とおる狂熱の日々」あらすじ
数々の逸話を生んだAVの帝王・村西とおるは、バブル崩壊とともに転落し、50億円の借金を抱える。
彼は再起を図ろうと、1996年の夏に北海道で4時間を超えるDVD用Vシネマと、35本のヘアヌードビデオの撮影に挑む。
出演するモデルたちのキャスティングや主演女優の身勝手な行動などトラブル続出で終わりの見えない撮影現場、人間関係の崩壊。その中で村西はエロスを追い続ける。
こんな映画があっていいのか?
はっきり言う。
久々にこんなにヒドい映画を観た。
それが第一印象だ。
この映画から何を感じ取ればいいのだろうか、監督が言いたいことは何なのか、、、
最後まで掴むことができないままに終わってしまった。
そんなクソのような作品にも関わらず、見終わった後、不快感が、全くない。
むしろ、主演の若かりし村西とおるの存在を、愛おしく思っている自分がいた。
この作品は、映画の中にその意味を見つけるのではなく、見終わった後、現実世界の中で感じることができる、近年稀にみる摩訶不思議な作品である。

ジェントルマンぶりを見せる
撮影を中断させる信じられないようなトラブルが、現場で次から次に起こる。
しかし、どんな時でも、村西監督は女性には優しい。女性を愛おしい存在として大切に接している。常人でも怒り狂いそうな時でさえだ。
なんと言っても、女性との距離感の詰め方が秀逸だ。
移動と時に隣を歩きながら、スッと手をつないだり、拗ねている子のスカートの裾をめくり女として接したり、どの行動も考えてやっているというよりは、天性のものとしか思えない。
その天性のジェントルマンぶりに、女性たちが心惹かれるのも無理ない。
全裸監督、山田孝之との秘話暴露
舞台あいさつで、村西監督は昨年ブレイクした「全裸監督」のウラ話を暴露した。
Netflixから制作のオファーを受けた時、自分を演じる俳優は、福山雅治さんでお願いしたという。
失笑され、その後キャスティングされた山田孝之さんと会う。
山田孝之さんに村西監督は、「白パン一丁で、駅弁や立ちバックなどもあるのに、テレビCMに影響があったらどうするんですか」と質問したところ、
「僕は俳優です。全裸監督が原因でCMがなくなったとしたら、それだけの俳優ってことです」と山田さんはハッキリと答えたという。
山田孝之、男前。
全裸監督で魅せた、まるで村西とおるが憑依したようなあの演技には、山田孝之さんの俳優としての高い意識があったのを知って、また見たくなった。
3月からシーズン2の撮影が始まることを口にした村西監督のサービス精神と72歳とは思えないバイタリティは、衰えを知らない。その存在自体が、現代日本への何かしらのメッセージなのかもしれない。